2年度日本学術振興会 拠点形成事業 B: アジア ・アフリカ型
琉球大学熱帯生物圏研究センター 

環境DNAメタバーコーディングを用いたマングローブ生態系の全球的解析

プロジェクト概要 2020-2023

研究プロジェクト概要説明:

 琉球大学熱帯生物圏研究センターは、日本の亜熱帯に位置する全国共同利用・共同研究拠点として、国内の熱帯・亜熱帯研究に貢献してきました。また、国内で唯一「マングローブ学」の名を冠する研究組織を持ち、日本のマングローブ研究の中心として、国内外で研究ネットワークを構築して研究・教育を実施しています。特に、西表島に位置する西表研究施設には、教員4名が常駐し、マングローブや亜熱帯林、サンゴ礁の生物多様性を研究しています。

2020年4月から始まる本研究プロジェクトでは、令和2年度日本学術振興会 研究拠点形成事業 B.アジア・アフリカ型の補助を受け、琉球大学熱帯生物圏研究センター西表研究施設が中心となって、アジア・アフリカから新大陸にいたるマングローブ保有国にとって重要な国際研究交流拠点の構築することを目指しています(JSPSのHPで公開済の計画概要PDF)。国際的な共同研究体制のもとで目指すのは、環境DNAのメタバーコーディング法によって得られる魚類や底生生物の多様性を、マングローブ生態系の機能評価指標とすることです。琉球大学内の2部局(戦略的研究プロジェクトセンターと理学部)、筑波大学、および海外の9拠点および中南米の3協力国と共同研究体制を新たに構築し、全球的なマングローブ生態系の保全に貢献すると共に、当センターのマングローブ研究機能をさらに強化して、中核的国際学術研究拠点の形成を目標としています。

研究交流計画の概要

①「環境DNAメタバーコーディングを用いたマングローブ生態系の全球的解析」と題する本研究は、

(1)フィールドでの採水サンプリングとマングローブ生態系機能のデータ取得

(2)実験室での環境DNA分析実験とコンピュータを用いたデータ解析

(3)各種生物のリファレンスデータベース構築(注: 現地における生物の標本採集・作成、DNA抽出、バーコーディング領域の塩基配列決定、データベース化)

の3つを含んでおり、最終的には、環境DNAメタバーコーディングを用いてマングローブ生態系の機能を評価する指標を確立して、全球的な解析を行うことでマングローブの保全に貢献することを目指します。

(1)のフィールドでのサンプリングと(2)のDNA実験およびデータ解析では、各国からの参加者に対して技術移転とトレーニングを行います。国内では琉球大学並びに筑波大学においてセミナーとトレーニングコースを実施するとともに、英文解析マニュアルやフィールドガイドを作成・配布して、若手研究者の育成と知識の普及に努めます。また、海外フィールドでの現地トレーニングと各国から得られたサンプルを解析し、得られたデータを参加国間で比較解析することで知見の共有を図ります。(3)のリファレンスデータベース作成は、各拠点機関が中心となって各国で予算を獲得して、独自の研究プロジェクトとを実施して行う。最終的に得られたデータを統合して全世界対応のグローバルデータベースとする。上記3つの研究は相互に関連しており、実施する過程で、日本を中心とする交流相手国間での活発な研究交流が期待できます。

② セミナー 参加研究者および研究分野相互の交流の促進と、若手研究者の育成を目的として、毎年日本国内で2回、国外2回の国際セミナーを開催し、研究成果を発表・論議する。同時に各国コーディネータと研究グループリーダーの会合、 および研究グループごとの会合を開催し、研究グループ内・グループ間の調整と、事業全体の実施計画、成果発表について検討します。

③ 研究者交流 本事業では、拠点として参加する日本及び9カ国の研究者だけではなく、日本側協力研究者として中南米の3カ国から若手研究者を上記の共同研究およびセミナーに参加させて、研究者交流を行う。本事業の拠点国からの参加者は、上記①共同研究と②セミナーで参加国同士の交流だけでなく、中南米の研究者とも研究交流することで、全球的なマングローブ研究のネットワークを構築できると考えています。 

B02-07_Ryukyu_R2gaiyou.pdf